2014-03-24 博士(工学)の学位を頂きました

学位授与式

早朝に起きて,バスに乗ってNAISTへ. 1週間ぶりのNAIST. なんか,明日も,明後日も,この場所にいるような気がするんだけどなあ. 大学内の寮に住んでいたので,5年間,文字通り生活と研究の場だったからな.

式典まで時間があるので, 寮の部屋のカビ取りをやったり,書類を片付けたりする.

博士(工学)の学位を頂きました

会場はミレニアムホール. 壇上で学長に学位記を頂くまで,信じられなかったのだが,学位記を受け取って,どうやら修了できたみたいだ,ということを実感する.

この一年の厳しさ

この5年間,特に今年度は本当に辛かった. 色々な〆切が重なったいもして,言葉にできないプレッシャーをずっと感じていた. 修了要件がいつ満たされるのか分からない,修了後の進路も全然分からない. 全てを放り出して,逃げ出したくて. 発狂寸前といっても過言ではなかった.

実際,本当にギリギリのスケジュールで, 進路選択の方向性を決断したのが,10月26日, 修了要件が満たせたのは10月28日, 進路が決まったのが12月13日, 学位論文を(実質的に)書き始めたのは12月26日, ドラフト提出期限が1月9日, 公聴会が1月27日, 博士審査願提出(2回めの論文提出)が2月6日, 2月21日が最終審査.

精神的なプレッシャーは,確実に体にダメージを与えていて, この半年は,胃薬や睡眠導入剤に力をときどき借りたりもした. *1

死ぬかと思った.

満身創痍であっても,なんとか乗り越えられたのは, 一緒に学位論文に取り組んだ後輩や,色々と雑談や研究の話ができた後輩が 周りにいてくれたおかげだと,思っている, (博士論文の謝辞にも書いた)

(私にとっての)博士号の価値とは

そこまでの苦しい思いをして得た博士号,その価値とは何なんだろう. どうして私は欲しかったのだろう.

よく,「博士号は研究者にとってのパスポート」だと言われるが, 私にとっては,運転免許のようなものだと思っている.

免許を持っていても交通違反ばかりするような運転をしたり,大事故を起こす人もいるように, 運転免許を持っていることと,運転スキルの良し悪しはかなりの乖離はある. 運転免許は,ある程度の運転技術がある,というぐらいの意味合いしかない.

同様に, 博士号がなくたって,良い研究や開発はできる. 実際,企業のエンジニアの方でも,博士号を持っていなくても.第一線で活躍されている有名な方はたくさんいらっしゃる.

「箔をつける」. 俗っぽい言い方をすれば,そうなのかもしれない.

でも,博士課程で得たものは,めくれば剥がれる薄皮のような箔じゃなくて, 一生モノの経験だと思っている. この辺の話は以前の日記に書いたので割愛する.

だからこそ,運転免許と同じように, そういう経験をしたんだよ,と客観的に証明する証が欲しかったのだ.

末席からのスタート

博士の末席というものがあれば,間違いなくそこに座るべきは私だと思っている. 少なくとも現時点では.

博士論文を書いている間,いかに自分がデータに向き合ってこなかったかとか, 歴史的な経緯に無知であったかとかいうことを思い知らされた.

あと1年あれば,もっといろんな知識や技術,経験を身につけられて卒業できるのに,なんて思ったりもした.

飛び級した1年分のハンデは自分の中ではいまだに解消できていない,と思っている.

だから,来年の春には,少しでも成長した自分でいられるように,色々な取り組みを行いたいと思っている.

*1 学位授与式の翌日以後,服薬の必要が全く無くなった

5年前の自分に伝えたいこと

博士課程を終えて,誰かにアドバイスするなんて,ぼくにはできない. そこまで偉くない,という思いもあるが, 個人差がかなり大きいと思っているからだ.

だから,5年前にNAISTに入学した自分への3つのアドバイスという形で, 振り返りをまとめようと思う. 以下のアドバイスは,あくまで自分へであって,誰にでもあてはまるとは限らないことに注意されたい.

その1:たくさん失敗しよう

入学したばかりのあなたは,早く成果を出したいと,野心的というか希望に燃えているはずだ. だが,あえてこう言う. 「たくさん失敗しよう」.

この考えを端的にまとめてくれているのが,「成功確率が高い人=チャレンジしていない人」という記事だ.

良い研究テーマを見つけてサッと良い結果を出したいなんて考えずに, 色々やってみよう. 問題設定を具体的なものにして,初めてみよう. 実例に向き合ってみよう.

だたし,がむしゃらに実装しろという意味ではない. 先行研究や,良い研究の方法論は知るべきだ. (参考;「一流会議の論文を100本読むと大体わかってくるというのはガチ」

確か入学直後にこの本を,あなたは読むだろう.

その時は,はーなるほどなーくらいしか思わないだろうが, 修了する頃には腑に落ちているはずだ.

その2:インプットするために,どんどんアウトプットしよう

勉強は大切だ. 金出先生の本にも書いてあったが,知識がないことには,始まらない. だから色々勉強すべきた.

知るべきことはたくさんある. 日本語の文法,アルゴリズム,言語資源の特徴…….

最初に全て知ってから研究する,というのは不可能なので, ある程度の時点で見切りをつけて自分の研究を始めるといのは必要だ. だが,常にインプットするという態度でいよう.

そして,逆説的かもしれないが,自分の知識にするために,どんどんアウトプットしよう. 教えることは一番の勉強法,ともいうが,あなたも同様で, 誰かに伝えようというという意識でいると,ちゃんと勉強する.

勉強会でも,ブログでも何でもよい. 最初は質が低くたってよい. どんどんアウトプットしていこう.

アウトプットは人のためならず.

(ちなみに,私は最近技術情報のページを作って,拡充していっている.)

その3:人を大切にしよう

色々他にも言いたいことがあるけど,これを最後のアドバイスにしておく.

月並なアドバイスかもしれないけど,修了間際,死にそうになっているあなたは, この言葉の真意を理解するはずだ.

入学直後,自分の力でこれまでやってきた,という意識が少なからずはあるはずだ. まぁ実際そうで,高校受験や大学受験も必死に勉強したし,学部の時だって真面目に勉強していただろう.

でも,時々でいいから,周りの人のことに思いを馳せてみるのも悪くないぞ.

こんなことを言うのは,私が年をとったからかもしれない. でも,私が「生き延びられた」のは,本当に色々な人の支えがあったからだ だから,直接その人に恩返しできないとしても,別の人にでもいいから,親切にしてあげよう. 情けは人のためならず.

具体的にどうすればよいかは今は言わない. 母に「いつもまわりの人に何をしてもらったか考えなさい」といったことを言われたけれど, あなたは,これっぽちもその意味を理解していないかもしれない.

でも,親友が, どうすればいいのかを,その言動で間接的に教えてくれるから, よく観察するように.

ちなみに,どうすれば人生楽しく生きられるかは,心の恩師が教えてくれるぞ.

帰宅

式典後,追いコンに出て,茶筌をいただき,その後新居へ帰宅. 熟睡.

本日のツッコミ
seiji.kasahara (2014-04-02 [Wed] 23:25)

おめでとうございます!!これからの活躍を期待しています!

shirayu (2014-04-03 [Thu] 01:43)

どうもありがとう!面白いこと色々やっていきます!

Jota (2014-04-03 [Thu] 21:53)

おめでとうございます!
5年間のご努力に心から敬意を表します。
ここで聞くのは良くないかもしれないが、特定研究員ってどんな立場なの?

shirayu (2014-04-04 [Fri] 22:40)

どうもありがとう!
プロジェクトの予算で雇用されていて,
授業はせずに研究100%するポジションやよー.

niam (2014-04-06 [Sun] 23:07)

おめでとうございます!

shirayu (2014-04-07 [Mon] 00:08)

ありがとうございます!!